相続手続きは終了したものの、ブラジルの相続人への国際送金問題が発生
相続手続きの経緯
今回のご依頼は、コロナ禍になる前の2019年のご依頼でした。ざっくりと手続きの経緯を説明すると、日本で発生した相続で、被相続人には不動産や預金、株などの相続遺産がありました。
相続人となった依頼者が相続人を調べていくと、ブラジルに移民した親族にたどり着いたものの、直接には連絡を取り合う関係ではなく、どうしたらよいか分からないところから始まりました。
いただいた手掛かりを元にブラジルに住む相続人4名と連絡が取れるようになりました。日本側の相続人も他におり、不動産などの相続財産など複数の手続きを行う必要があったことから、幣事務所でブラジル案件を受けている司法書士事務所と一緒に取り組むことにしました。
2020年春以降、コロナ禍のブラジルでは大変な混乱があり、役所がほぼ動いていない時期もあり完全に手続きがストップした期間が長くありました。
そんな中、司法書士さんの努力のお蔭もあり、相続手続きが済みました。
さて、依頼者がブラジルに住む相続人ら4名に、それぞれ200万円を送金することとなりましたが、そこからも実は一筋縄ではいかなかったのです。
お金が着金したものの...
ブラジルは海外からのまとまったお金については、マネーロンダリングの規制により、着金した後でも引き出すことが大変なことがあります。今回、一人200万円の送金となったため、日本から送金をする前にブラジル側の相続人らに、受け取る銀行で日本からの送金がある事と、あらかじめ必要な書類があれば教えてほしい、とお伝えしてきました。
特に必要な書類はないとのことで、日本側からは、各受取人の情報、銀行のSWIFTやIBANコード、CPF(納税し番号)など、できる限りの情報を銀行に伝えて送金を行いました。
送金自体は、予定通り1週間から10日ほどで届きました。
さて、頭を悩ませたのはここからです。
着金したものの、ブラジル側の銀行で引き出せない、とのことです。
引き出すには、送られたお金が相続によるものであると、日本の公的機関が証明する書類が必要とのことでした。
今回の相続手続きは、協議によるものです。
相続手続きの際に司法書士が作成し、幣事務所で翻訳を行ってブラジル側でサイン証明してもらった書類は、公的な機関で発行したものではありません。
裁判所で相続分割が行われたケースなら証明するものは出てきますが、今回は、相続全体を証明するものがありません。
証明書を作るしかない
行政書士の業務の一つである、「事実関係を証明する書類の作成」という部分の行政書士法を提示して、幣事務所で相続証明書を作成しました。提出する相手はブラジルの銀行ですから、ポルトガル語版が必要です。そこで、日本語とポルトガル語併記の証明書としました。
証明書に入れた内容は、相続全体の概要、分割の金額、ブラジル側の具体的な送金先の情報等です。
はじめは、ブラジル側の相続人4名分を一つの証明書にまとめて、同じ証明書を4名に使ってもらおうと思い、送ったのですが、各相続人宛てに証明書を作成してほしい、とのリクエストを受けて4名別々に作成して、まずは、電子データーを送りました。
銀行からさらなるリクエストが
ブラジル側の銀行にお目通しをしてもらったところ、証明書を作成した私の情報や署名に加えて、日本側で送金を行った今回の相続手続きの依頼者の署名も書類に入れてほしいとリクエストがありました。そして、その原本をブラジルに送ってほしいとのことでした。
よし、これさえすれば、あとは送るだけだ、そう思って最終段階に来たとおもい、原本を送る段階となりました。
郵便局は引き受け停止?
4名分を依頼者に送り、署名をしてもらい、郵便局からEMS(国際スピード郵便)で発送しようとしたところ、窓口で、「ブラジルは引き受け停止になっています」と言われました。コロナ禍になって、ブラジルとの手続きの進捗が止まっていたことから、EMSを使っていない間に、引き受け停止になっていたんです。
船便だけ送れますと言われて、お届け日数を尋ねたら、3カ月と言われ、遠い目になってしまいました。
EMSは、航空便で配送状況の履歴が追跡でき、お届け日数や値段も見合うため、ほぼ一択でEMSを使っていたのですが。。。
仕方なし、と言ったら失礼だけど、お高めのFedEXさんにお願いをすることにしました。
ちなみに、これを書いている今も、ブラジル向けのEMSは引き受け停止中です。いつ再開するのでしょう。
無事に到着、やっと引出しできる状態に
FedEXさん、さすがに早いです。数日でお届けしてくれました。書類の原本が届き、後は銀行側でパスされるのを待つだけです。
引き出せるようになったら連絡くださいね、とブラジル側の相続人にお願いをしていたのですが、数週間たっても音沙汰なし。
ブラジルあるあるかもしれませんが、うまく行っているときは音沙汰がないのがブラジル。
とはいえ、日本側の依頼者も心配されているでしょうから、ブラジルの相続人にその後どうなったか尋ねたところ、全員がお金を引き出せるようになった、とのことでした。
良かった、相続は、送金までが相続ですからね。
相続を証明する書類の作り方を学ぶ
今までも、ブラジル側の銀行から相続を証明する証明書を求められて作ったことはあったのですが、今回は、より精密に、そして、日本側の相続人の署名なども求められました。日本で協議による相続を行った際に相続全体を証明する書類が公的機関から出ませんから、この方法しかありません。
今回出したものでブラジル側がOKを出してくれなければ、公証役場で宣誓をしてアポスティーユを付けようと思っていましたが、結果的にそこまでは必要ありませんでした。
今回のように一見、ムリなのでは?というケースでも、頭を巡らせて突破てきたときは本当にうれしいですね。
2年半にわたって幣事務所を信用し、忍耐強くご協力をいただいた依頼者様にもありがたく、良いお仕事をさせていただきました。